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包囲下ラファからの電話
2004年5月19日(水)


ガザ市:それは、5月18日(火)の深夜12時になる直前だった。 ラファで最もひどい攻撃にさらされている地区にいる友人のムハ ンマドに連絡を取ろうとした。その前にも昼間から何度か連絡を取ろ うとしていたのだが、うまく通じなかった。ラファからのニュースは、 タル・アッスルタン地区でパレスチナ人が多数殺されてい ることを伝えており、いよいよひどく心配させるものとなっていた。 イスラエル軍は火曜日の午前中だけで14人の人々を殺害した。地区 内にいるジャーナリストは、負傷者たちが路上で血を流して死にかけ ており、緊急の助けを求めていることを電話で伝えている。しかし、 イスラエルの狙撃兵が、路上に横たわっている死体や負傷者に近付く ものは誰彼ともなく射撃し、救急車や自家用車による救出を妨げてい る。

私はますますムハンマドのことが心配になってきていた。再び電話を してみると、呼び出し音が鳴り、一分ぐらいしてようやく、低く沈ん だ、疲れ切った声が聞こえてきた。ムハンマドは、彼の家が、いまま さにイスラエル軍の軍事作戦の真っ只中にあるのだと言った。「こう 話している間にも、戦車は家のすぐ前にいるし、アパッチヘリは上空 から周囲の家々に銃撃している。僕ら家族は皆一つの部屋に集まって いて、緊急の用事でなければ外に出ることはできない。」両親と7人 の兄弟姉妹とともに暮らしているムハンマドはこう言った。

普段は軽快で明るいムハンマドは、彼の置かれたひどく危険な極限状 況を反映した声色で話した。「僕らは周りを死で囲まれている。」彼は 続けた。「家の近くの路上には人の体が20以上は横たわっている。 そのうち何人かは死んでいて、他の者は血を流して瀕死の状態で救急 車を待っている。イスラエルの狙撃兵は一帯の高い建物をすべて占拠 し、動くものなら何でも撃っている。救急車や救急チームも狙撃さ れているんだ。」

彼はまた、一つの部屋に閉じこめられている状況についても説明して くれた。「部屋から出るには、窓から見られないように這って進まな きゃならない。大人は子どもが部屋から出ないようにしないといけな いんだ。」「最悪なのは、ミサイル攻撃や戦車からの砲撃があったと きに子どもたちが泣きわめくことなんだ。家の目の前で戦車に乗ってい る兵士が恐ろしい音を立てて重機関銃を3分間撃ち続けることを想像 してみてくれ。子どもたちはそんなことに耐えることはできない。わけ がなからない状態になってしまうんだ。」ムハンマドは彼の小さな弟 や妹たちがさらされている状況を具体的に伝えようした。彼は続けた。 「本当に悲劇的なのは、隣の部屋や通りから助けを求めて叫ぶ声が聞 こえるときだ。誰も彼らを助けるために外に出ることができないんだ。 僕らの近所のグネイム家では二人の子どもが死んだ。12歳の少年と 16歳の少女だ。二人とも、家の屋根に上ったところをすぐにイスラ エルの狙撃兵によって撃たれた。二人とも出血して、助けを求めて叫 んでいたけど、兵士たちは断続的にあちこちに向かって発砲し続けて いた。彼らの痛みに満ちた声が聞こえたけど、だれも助けに出ること ができなかった。兵士たちはあらゆる方向に向かって銃撃を続けてい た。二時間後、その姉弟は屋根の上で死んでしまった。」

電話回線が突然切れたので、またかけようとしたけれども、つながら なくなっていた。

報道によると、その日、20人以上のパレスチナ人が殺され、40人 以上がけがをした。多くのラファの住民が地元のラジオ局を通じて、 救急車や医療チームが破壊された地域に来ることができるよう、UNRWA や赤十字やコフィ・アナンに対して懇願した。ラファの人々はタル・ アッスルタン地区への攻撃に軍事的に重要な目的などないことを知っ ている。なぜなら、この地区は、イスラエルが武器密輸が行われてい ると主張している国境に接していないからだ。それに、イスラエルの 軍事基地や入植地はこの地区を直接見渡すこともできる。ラファ市の 指導者の一人は、この地域へのイスラエルの攻撃は「殺すことだけが 目的の殺人」だと言った。

ラファからの最新のニュースによると、イスラエル軍は住民たちに対 して家から出て近くの学校に行くことを要求している。しかし、パレ スチナ側のラジオ局は従わないよう警告している。なぜならイスラエ ル兵や狙撃兵は、実際に群衆の中から若い男性を狙い撃ちしているか らだ。多くの死体がいまだに屋外で放置されたままになっている。

B・サーメド
パレスチナ、ガザ
2004年5月19日

→英語原文












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